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奈良フォーラム「壊れゆく森」は大盛況 ─ 山守を育成する「大和森林管理協会」が発足

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台風や豪雨が続いた2018年。特に7月には西日本豪雨が全国各地で山の土砂災害を招き、死者・行方不明者の数は200人を超えました。一方、災害を予防するような森林の整備が求められていますが、大型機械を導入した皆伐や過度な「間伐」が目立ち、土壌流出を引き起こすような環境負荷のかかる林業が広がっているのも事実です。

その解決策を見出し、新たな森林の未来を描こうとするシンポジウム 「壊れゆく森〜森林施業や道づくりはどうあるべきか」が11月4日、奈良県橿原市で開催されました。

主催する「大和森林管理協会」の泉英二代表が挨拶に立ち、会場に集まった約100人に開催趣旨を述べました。続いて同じく主催団体である当会の中嶋健造が登壇しました。中嶋は全国の林業現場をまわって目の当たりにした土砂災害の様子を写真と映像で解説し、大型機械による林業施業と土砂災害が密接に関係していると説明した上で、それに対する自伐型林業の特徴について、「森林の環境保全に配慮しながら、森の経済的価値を向上するような林業・森林経営の両立を目指すのが「自伐型林業」です」と語りました。

(東北の皆伐・森林崩壊の現場(6.19フォーラム報告参照))

また、山主と地域住民がともに経営する「自伐型林業」の素晴らしさを知ったのが江戸時代から続く奈良県の吉野林業だと言い、「環境保全で経済価値の高い林業を生み出したこの地域の展開には期待したいです」と呼びかけました。

続いて登壇した林業家の橋本光治さんは、「かつて他人に山の施業を任せた結果、残った木がほぼなくなってしまいました」と過去を振り返りました。人に任せきりでは山を引き継げない、と思った橋本さんは銀行員から林業家に転じて独立。30年以上経った今もなお強調するのは作業道の大事さで、橋本さんが常に心がけたのが、吉野林業にも共通して伝わる「壊れない道づくり」でした。
「道があればいつでも山に入れます。その道幅は2.5メートル以下、切高(地面からの高さ)1.4メートル以下に抑えて、木はできるだけ残していきました。」

(橋本さんの森林。天然更新の針広混交林だ)

橋本さんが所有する100ヘクタールの山には約30年間で30キロの道をつけており、そこで崩れたのはたった9メートルと言います。全体のわずか0.03パーセントだが、「絶対に崩さないという気持ちで道づくりをしてきた結果です」と強調しました。

フォーラム後半には企画者の一人であり、大和森林管理協会の泉英二代表が立ち、「森林防災と森林法・森林経営管理法」と題して話題を広げ、「強権的な法律」と批判してきた森林経営管理法(2018年5月成立)を紹介。「悪用したら民有林は丸裸にできます。一年後には国有林も丸裸にできるような流れが見えており、サステナビリティ、持続可能性が失われかねないような流れは問題」としました。法律廃案を訴えた背景とともに、今後高まる市町村の役割を伝えました。

企画者であり林業家の谷茂則さんは、集まった人たちを見回しながら、今後の課題をこう話しました。
「大規模な森林を山守(やまもり)という山を所有していない地域住民に任せてきたのが吉野の歴史です。今はその山守が少なくなり、新たな山守の育成が喫緊の課題です。山守を受け入れ、育てられる地盤を創りたいです」。
また、吉野地域全体が抱える事業が自治体毎にバラバラに取り組まれていると言い、「紀伊半島全体を見られるような、広域地域が知恵を出し合い、課題解決に向かわせられるような活動をしていきたいです」と意欲を見せました。

新団体の「大和森林管理協会」の活動は、これから目が離せなくなるでしょう。

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