自伐型林業家紹介
三木真冴「復興支援から生業づくりへ」(岩手県釜石市)
2011年に岩手県に移住した三木真冴(みき・しんご)さん(36)。
大学卒業後にサラリーマンとして都内の企業に勤めていたが、東日本大震災のあとすぐに被災者に物資を届ける復興支援で東北の避難所に入った。図書館が被災した地域に赴き、移動図書館の運営を手伝っていた時に、「教育や文化って、こんなに後回しにされるものなんだ」と感じた。
沿岸部の自治体を回れば、図書館司書のいない地域も多く、新しい本を購入する資金さえわずかな町村に遭遇した。国の支援なしには文化的な暮らしを営めないのか。自分の育った都会にはない気づきだった。
東北各地には、町が自立するヒントもあった。それは、一見すると無価値のものを価値づけし、新たな地域の生業をつくる取り組みだった。そして、その頃に出会ったのが「自伐型林業」だった。「岩手県の面積の約8割は山林で、もし土砂崩れが起きたら田んぼにも海にも影響がでます。価値がないと放置された森林を整備して、山を守りながら生業がつくれる自伐型林業はとても魅力的でした」。
東北地方で自伐型林業を普及する団体(東北・広域森林マネジメント機構)を立ち上げると、「自分でやることが最大の普及になる」と気付き、山を確保し、機械を揃え、林業者としての一歩を踏み出した。今では青森、宮城ともネットワークをつくり、三木さんの後を追いかけるように次々と参入する林業者の育成に励んでいる。
そして昨年、震災から10年の節目に子どもを授かった。文化的な活動にはなかなか手が回らないが、子どもや地域住民などに山の価値を伝えている。
「山は松茸が採れたり、養蜂ができたり、登山を楽しんだり、たくさんの恵みを与えてくれます。東北に来て初めて教わった山の豊かさを、1人でも多くの人に感じてもらいたいですね」。(文:上垣喜寛)
日本唯一の林業専門番組《ZIBATSUニュース》(2019年9月)では、三木さんが移住した経緯や現状の林業の活動などを紹介してもらいました。
2022年7月に開催された自伐フォーラムでも事例紹介をしてくれました。(画面クリックで三木さんの発表するタイミングから再生できます)
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