自伐型林業家紹介

天野紗智「スノーボーダー×林業という生き方」(長野県小諸市)

自伐型林業家紹介

山で生きる術を得た若者たちは、そこで新しい働き方を生み出す。平成生まれの天野紗智さん(33歳)もその一人だ。

「私たちは森で遊びながら働く、新しい生き方を歩み始めました」。天野さんは林業者でありながら、実はスノーボーダーとして活動している。


(スノーボーダーやクライマー等の仲間に囲まれる天野さん(中央)。2018年に一般社団法人「ディバースライン」を立ち上げ、森林整備やアスリートのセカンドキャリア構築を目指す活動を続ける。(写真提供・Kiyomasa Kawasaki))

秋田県で生まれ、幼少期から雪山に通っていたという天野さん。学生時代にスノボの魅力に引き込まれ、東京で勤めながら、稼ぎと休暇はすべてスノボに注いだ。「板を一枚履くだけで、自由に自然を駆け回れる。スノボは生涯かけて楽しめる遊びなんです」と天野さんは語る。数々の大会に出場し、表現を続けることで、スポンサーがつくプレイヤーにまでなっていった。

(写真:RYO HIWATASHI 樋渡亮)

しかし、そこではスノボだけでは生計が立てられないという厳しい事実も垣間見た。「山で暮らしたいのに、都会で稼がねばならないというジレンマが常にありました」。

そこで出会ったのが自伐型林業だった。何十年も同じ山を離れず整備して収入をあげていく林業。「スポーツとの兼業スタイルが築ける気がしました」。

実際にやってみると、雪のコンディションに合わせて活動予定を立て、滑るか林業するかを決めていく、自然環境に合わせた働き方があった。2020年から地元の農家の山林約3ヘクタールの管理を依頼され、山に道を通し、自由に車で乗り入れられる森林整備しやすい森を作った。良い山づくりは評判を呼び、今年から天野さんが住む長野県小諸市が所有する山林を任されるようになった。通年山に仕事も遊びもあり、都会の稼ぎに頼る必要はなくなった。

(写真:keen提供)

天野さんの暮らしの変化は、1つの小さな動きかもしれないが、放置された森林を抱える地域を変える大きなヒントになるはずだ。

「気軽に森で遊んだり、森で癒やされたり、人と森がいつでも近くにいられるような山を地域にたくさんつくり、自然と共存した町の暮らしを生み出したい」と天野さんは笑顔を浮かべた。(文:上垣喜寛)

 

日本唯一の林業専門番組《ZIBATSUニュース》第131回では、天野紗智さんが自身の活動を紹介してくれています。

自伐型林業推進協会主催のフォーラムでも事例紹介をしてくれました。

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