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「84自伐フォーラム」参加者から寄せられた26の質問とその回答
8月4日に開催された「84自伐フォーラム」には230人の参加者が会場に詰めかけてくれました(→当日の映像はコチラ←)。その参加者から、26もの質問や意見が寄せられました。当会としては一つ一つ答えたいと思い、その回答を用意しました。
中には専門用語もあり、都度、必要な情報は更新していきたいと思います(最終更新日は文末に記載)。
Q,1
木の値段の安さに驚いています。50年の杉の木を20トン切り、市場へ出そうとしたが、安いから合わないという事でやめ、林業会社へ出そうと話したところ、道路まで出してトン3000円。諦めました。今、薪の山が出来ている。
他人等に依頼すると、そのような結論に行き着いてしまいます。伐採だけでなく、自分で搬出して市場への出荷を試みてはいかがでしょう。それが他人任せではない「自伐型林業」のスタートラインであり、その先の道筋が見えてくるはずです。
出荷する際は市場のニーズをよくチェックして、高く売れるような造材を心がけて下さい。一律の長さで切りそろえるような造材をすると、同じ量を出荷しても売上は少なくなってしまいます。
「値段が安い」と感じているようですが、何を基準にするかが問題です。材価の底を売っていた平成23年度に比べれば、今年はその1.5倍程度に上がっています。そんなに安い価格ではないと思います。
Q,2
一代では、お金にならない。孫の代まで余力がない。国が守るべき。
現在の人工林(戦後の拡大造林)は平均樹齢が55年を超えてきました。この樹齢で択伐による自伐を実践すれば、次の世代にさらに良い森(経済的にも環境的にも)を残せます。3回程度の間伐を実施し、約70年を超えてくれば、造林・育林時のコストを含めても採算が合うレベルまで持っていけると感じます。ただし、適正な多間伐施業を自伐で実践している人だけに訪れる現象です。事業体等に委託した人には、ほぼ不可能なことです。
また、この広大な森を国が直接手をかけて良好な状態を維持させるのは不可能です。国に頼るよりもまずは地域住民が責任をもって実践すべきことだと思います。”
Q,3
儲かる林業とは難しいが、可能性を秘めた林業という意を強くしました。ありがとうございます。ゲストメッセージが分かりやすかったです。
適正に多間伐施業を実施して樹齢70年を超えた森は、今の材価でも十分に「儲かる林業」になります。
Q,4
あくまでそこそこ高値が付くのは、一部マーケット。大量に活用するCLTなどは、A材である必要はないが…。市場から見た林業のあり方、識者の知恵を知りたい。
一部マーケット(無垢材流通)の拡大を目指す必要があります。現状の集成材(CLT含む)流通の国産比率は3割程度です。この集成材向けの流通は製造コストが安い外材(輸入材)が主流であり、取って代わる材はあふれており、今後さらに安くなる可能性が高いと言えます。「CLT拡大が日本林業救う」などと言っているようでは、将来に渡って希望を持てる林業のあり方を創造できないでしょう。
Q,5
「A材=儲かる」について。製材業の美しい無垢材、市場価格が合っていません。ニーズは一定あるので出口のプライスを握るマーケットを成熟するための知恵が欲しい。
それはかつての「木材バブル時代」の価格をイメージしているのだろうと思います。そういう時代はもう来ないと思います。しかし、国内の無垢材需要を少しでも増やす努力と海外に無垢材流通を拡大させられれば、現状価格の2倍程度には上がる可能性があると思います。
Q,6
林業が古くから盛んである場所は、森林組合が既に入っている山が多いのではと思います。自伐型林業と、既存の林業と衝突したりなど経済面で困った事があった場合、どのように、上手にコミュニケーションを取り、改善をされているのか教えてください。
古い林業地ほど森林組合が入っているというのは、その通りです。そういう地域ほど国の補助制度に沿うように大規模施業や皆伐が実施されており、山林の劣化が激しいという現実があります。さらに昨今の豪雨の頻発で土砂災害の誘発が問題になり始めています。過度な間伐や皆伐を避ける自伐型林業はこれとは真逆の手法ですので、今すぐ連携するのは不可能でしょう。こういう問題に気が付いて対策を打とうとする森林組合であれば連携の余地はあると思いますが、そういう兆候はごく一部にしか見られず、全国的には超少数派であるのが寂しい現実です。
Q,7
出荷しないといけない材の量があると思いますが、自伐型では間に合わないのではないでしょうか?
大量に材を必要とする需要先は、大型集成材工場・大規模発電所・製紙会社等ですが、これらは大量のB・C材を必要とします。これに供給するのは自伐型林業者では無理です。なので、大型高性能林業機械を使い大量に一律造材して、これらの工場に出荷する大規模施業が国の高額補助金に誘導されて実施されています。この施業は生産性を優先するので材の選別はほとんど行われず、A材までもがB・C材として出荷されている現実があります。これが材価低迷の一つの原因です。
日本の材は本来、世界一ともいえる高品質材です。A材(無垢材等)の需要先には供給できていくと思いますし、現在も実施しています。自伐型林業者は小規模分散型です。自伐モデルが確立されると倍々ゲームで増えていくことでしょう。そうすると、供給量は今の森林組合をはるかに超えてくると思います。自伐型林業者の森の1haあたりの蓄積量は徐々に増え将来、現行林業の3~4倍になってきます。ドイツ林業の主は自伐林家ですが、既にそういう状況になっています。自伐林家数が増えれば大規模需要にも供給できるようになるでしょう。
(自伐型林業者たちが目指す徳島県の橋本光治氏(当会理事)の森林)
Q,8
県・国が自伐型を推進していない理由は何でしょうか?推進されれば森林組合内での取り組み方も変わり、好循環になると思いますが…
国と県が現行林業を戦後の長年にかけてつくってきたためです。森林組合とは一体的になっているため、変わろうにも変われない状況にあるのでしょう。あるいは変わることを恐れてできなくなっているのではないでしょうか。先輩がやってきたことを変えるのはなかなか勇気のいることです。
現行林業界の問題点は、現状分析が的確にできないために、その対策も間違ってしますという状況が繰り返されている感じです。日本林業の特性と特徴を踏まえた資源分析ができればよくなると思うのですが、入り口からして間違っている感が否めません”
Q,9
今回の大豪雨等への治山、治水対策を行政に求めるとの苦言が政治家より呈された。植林政策はそもそも政府が定め、国民に実施を求めたことであり、また、高額の税金を徴収している現実がある現在、それなりの責務を果たす必要があると思われますがどのようにお考えですか?
いま全国で豪雨による災害が急増しています。この原因をきちんと精査すべきです。「自然災害」で逃げてはいけません。当方の調査では、林業施業に起因する災害が激増していることを確認しています。昭和30・40年代の伐採+拡大造林で災害が急増した歴史があります。その後樹木が大きくなり、災害が減少し、今また伐採が増え災害が急増しています。昔に比べ伐採時の施業が大規模化して山に負荷のかかる手法に変わっているのに加え、激しさを増す豪雨がそれをさらに拡大しています。環境保全型の林業手法とは、災害防止・減災する施業手法とはという点を、真剣に考えていく時代に入っていると思いますが、現行の林政はそれを避けているように映りますね。
(東北地域の皆伐施業地の崩壊写真。集落のすぐ裏で幅の広い作業道から土砂が崩れた。)
Q,10
自分の切った木材、育てた木材が、合板やCLTに使われたら(ぶっちゃけ)悲しいですか?(T_T)
A材ではなく、B・C材として使われるということですから、良質材であれば悲しいですね。材質に見合った売り方、使われ方がされなければ林業は成立し難いですね。
Q,11
森林組合と自伐協の共存繁栄の道は?
森林組合を本来の姿(山林所有者・組合員のための組合)に変えさせることは必要ですが、国の意向に従っている今の状態のままでは共存繁栄は不可能な状況です。委託型林業を進める森林組合は、所有者自らが経営をしようとする自伐林家および新規の自伐型林業者を敵視してきます。いつの日か、組合員である森林所有者の実践を手助けする本来の姿を取り戻す森林組合が誕生することを望みます。
Q,12
森林組合との敵対関係及び地域との関係は?
森林組合側が自伐を敵視するというのが実態です。あまり表には出せない話ですが、過去に森林組合に罵倒されたり、脅されたりする事例は全国で頻繁にあり、当会に助けを求める声があります。1人1人の自伐型林業者は小規模ですが、それでもかなり激しい、いじめを受けている事例は多いです。
それと当団体に寄せられる最近多い相談事項が、これまで森林組合に施業を委託してきた山林所有者が、森林組合の間伐施業により崩壊が起きたり、過間伐や列状間伐による森林劣化が起こり、相当怒っている事例が急増しています。中には「森林組合被害者の会を立ち上げてくれ」という怒りの声も上がっており、山林所有者の森林組合離れも起こってきています。
Q,13
切って集材までは個人で出来るが売り上げ先の確保は、どのようにしたのか?
A・B材は原木市場か製材所への販売が主になります。C材は発電所かチップ屋さんへ販売します。薪で自主流通させてもよいですね。
Q,14
儲かると言いますが、実際にいくらぐらいの売り上げがあるのでしょうか?(補助金に頼らない場合)
所有・管理山林に作業道敷設が終了すれば、補助金から卒業でき、持続的に収入が得られる道筋が見えてます。植樹後50年まで未整備だったとすると、だいたい樹齢60~70年でこういう状況に持ち込む目標で実施してみてください。基盤整備である作業道敷設の段階は、持ち出しが多いため補助金に依存することは仕方ないと思います。この際の補助金も2千円/m確保できれば、十分な収入になっていくと思います。当面は1haあたり100万円程度の収入が見込めると考えてください。樹齢が上がれば、この額が増えていくはずです。
Q,15
デメリットはないのでしょうか?
現行林業に比べると、デメリットはほとんどないと考えます。デメリットというか、危険性としては自伐型林業や多間伐施業の正しい知識と情報が出回っていないので、無知のまま自己流で実施するのが心配です。山に合っていない(国や県の一律の補助制度に合わせた)施業で手を付けてしまうと、残った山の持続性がなくなるため、将来の自伐展開も失敗してしまいます。特に作業道の敷設の仕方、多間伐施業に必要な適正な間伐の仕方の知識が重要となります。
Q,16
年間の活動スケジュールはどのような感じになるのでしょうか?
伐採・搬出は秋~冬が適しています。作業道敷設は春・夏でも大丈夫です。ですので作業道敷設が終わった山は秋・冬だけ施業する形になりますので、春・夏の副業を持つのが無理のないライフスタイルになると思います。
Q,17
植林は行っているのでしょうか?
何も植生の無い山には、最初は植林します。現状で50年生前後の山林を確保できた人は、今後、伐採本数を最小限に抑えた薄い間伐を繰り返していきますので植林(再造林)は当面(今後100年程度)は必要ありません。ただ、何らかの状況(雷や火事、樹木の病気等)で必要になれば実施する必要があるでしょう。また、100年以上になった個所で、これ以上本数が少なくなれば風から守れない状況になってきたら再造林が必要になります。その際でも、間伐施業を主に置きながら、再造林は小面積(数反単位)で行ってください。
Q,18
林地残材はどうしているのでしょうか?C材、D材でどこかに運搬しているのでしょうか?
現状多いのが木質バイオマス発電所です。地域で薪需要のあるところ(薪ボイラーや薪ストーブユーザー)に売ってもよいと思います。
Q,19
今、現在、50年スパンで間伐している山を、どのようにしたら150年スパンの多間伐施業が出来る山にして行けるのでしょうか?(今からでも変えられるのか、1からやり直さないといけないのか)
多間伐施業は30年生以降、約10年毎に間伐を繰返す手法です。50年スパンではありませんので間違わないようにしてください。現在50年生前後の未整備林が多いと思うのですが、その未整備林であれば多間伐施業に移行できます。ただし、haあたり千本程度以上あることが重要です(未整備林であればほぼこの状態だと思います)。
森林組合等に委託して、大規模な作業道が敷設され、列状間伐や過間伐された山の場合は、逆に多間伐施業に移行できないケースが多いです。本数が減り過ぎ良木が少ない状態になったり、風が入り込むような状況が生まれていれば材質は劣化し続けるためです。また大きな作業道や簡易に敷設された作業道は必ず壊れます。壊れると修復が頻繁に必要になり、コスト増に加え山が劣化していきますので、持続的森林経営ができなくなるのです。こういう状況になっていれば、一からやり直さないといけない状況と言えるでしょう。高知県ではこういう山が激増しています。もったいないかぎりです。
(皆伐跡地では風倒木や土砂流出が増加している)
Q,20
山の所有者が小さい土地でいり組み、了解をとるのが困難な場合はどのように自伐、間伐を進めて行けば良いのでしょうか?(高齢、意識、山に住んでいない、価値がないと思っている)
山の確保は、工夫と忍耐も必要になると思いますが、山林所有者も悪い人ばかりではなく、良い人も多いので、組みやすい人から実施してください。理解の薄い山林所有者が多い時は、あきらめざるを得ない場合もありえます。
Q,21
山に入る手前になるかも知れませんが…教えてください。柴巻(円行寺奥、土佐山手前)の今は、手入れがされていない棚田と周辺の土地のことを考えています。岩石に気が根を張っている山で土砂崩れも起きやすい所です。谷の先越し?山腹工事をすることでまた棚田を手入れし直すことで土砂崩れは防げるようになりますか?
本格的な砂防工事を実施しても被害を受ける場合もありますので、完璧に防げるということではありませんが、自伐的な配慮をすれば、放っておくよりかなり防災・減災効果は上がるのは確実です。やる余裕があるのであればぜひ実施してください。
Q,22
佐川町では自伐に目を向けているようですが、国や県の考え方はどうなっているのでしょうか?
国はまだほとんど見向きもしていません。高知県は主政策ではないものの支援策は準備してくれている状況です。その多少の支援でも大きな成果は出ています。もっと本気で取り組むと、さらに大きな成果が出るはずです。現在高知県の「小規模林業推進協議会」の会員は500人以上にのぼっており(2018年8月現在)、中山間地域に千人以上の就業を生むのはそんなに難しいことではないと思います。佐川町以外の市町村の動向も重要です。
Q,23
大西氏へ 広葉樹の種類は?
ミズナラ・カバ・クリ等が多いですが、何でも利用しています。
(コナラをホダ木にして出荷する大西準二さん →詳しくは「北の大地で、一本の木を見つめ続ける眼差し」自伐協HP参照)
Q,24
大西氏へ 用材部分の具体的な利用は?(最終的にどんな製品になさるのですか?)
家具が多く、建築用(土台やフローリング)も増えています。
Q,25
普通のOLが週末だけなどカジュアルに林業に参入することも可能なのでしょうか?
可能だと思います。特に薪需要に対応する程度だと、軽トラ林業が可能となるでしょう。
Q,26
未来のLifeスタイル的に、農家とか兼業する人はいるけれど、林業も兼業が可能なのでしょうか?
林業は基本的に秋・冬が最適な季節で、兼業が基本です。春や夏に繁忙期を迎える農業や観光と兼業することが最もフィットするでしょう。サラリーマンの兼業も可能ですし、実際に存在します。最近ではスポーツとの兼業も始まっています。
日本の森林率(国土に占める森林の割合)は約67%です。高知は84%です。どの地域にも森林があるということで、主業・副業の土台になります。林業が最も兼業に適している産業と言えるでしょう。
(発表:2018年8月21日 制作:NPO法人自伐型林業推進協会 最終更新日:2018年8月21日)
【参考映像】
《84自伐フォーラム・第一部》梅原真「ジバツを翻訳してみる」&中嶋健造対談「ジバツのここがわからん」
<時間:01:37:27/撮影:自伐型林業推進協会>
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