自伐型林業とは

自伐型林業（じばつがたりんぎょう）とは、採算性と環境保全を高い次元で両立する持続的森林経営です。参入障壁が非常に低く、幅広い就労を実現します。

今、国土の7割を占める山林を活用する「地方創生の鍵」として期待され、全国各地で広がっています。（全国自治体一覧）

自伐型林業と現行林業の違い

森林価値創造/択伐施業型である自伐型林業

幅広い就労機会
専業・兼業、6次産業化、森の多目的活用化（森業・山業）と自伐と組み合わせた兼業化がなされ、多様な森林経営が展開されます。専業〜兼業〜障害者就労の幅広い形が、新たな中山間地産業の創出および地域活性化へとつながります。

現行林業比10倍の就業者創出力
一定面積の山林を離れず毎年収入を得続ける手法のため、面積あたりの就業者はアップします。専業型であれば30～50ヘクタール/人、兼業型であれば10～20ヘクタール/人の中・小規模な面積で自立可能です。

初期費用300〜500万円程度の低機械投資
チェーンソー（伐倒用）、3トンクラスのミニバックホー（作業道敷設用）、林内作業車（木材搬出用）、軽トラックor2トントラック（搬出・運搬）程度で、高性能林業機械は不要です。初期はレンタルしながら始めるなど、住民参加（就労）のハードルが低い。

自家伐採と小規模機械で低コスト
余計な委託経費や機械償却、燃料代がかからないため、施業の利益が確保され、採算が合います。

環境保全型林業
敷設する小規模な「壊れない作業道」は予防砂防の働きとなり、土砂災害防止に貢献します。自伐型林業者が同じ山林に張り付くため、獣の侵入を防止する。根本的な獣害対策となります。

択伐施業で長期的な森林経営を展開
長期にわたる択伐（たくばつ）施業は再造林回数を減らし、さらに再造林が必要な場合でも、小規模面積で行い、経営を圧迫するのほどのコストになりません。

施業委託型林業/短伐期皆伐施業型である現行林業

全国の山林所有者大赤字
国有林・各県の県行造林・民有林が合計約10兆円の大赤字に。永続的な高額補助金を必要とする非自立的な林業が展開。

高額（1億円程度）の初期投資
数名の雇用のために1億円もの機械投資をし、年間1千万円ほどの修理費を支払い、1日200～400リットルもの燃料を消費する高投資・高コスト型林業。

面積当たりの就業者が極端に少ない
オーストリア、ドイツなど中欧の1／10以下。山林の「所有」と「経営」を分離した委託施業の場合、山林所有者が毎年収入を得るためには、所有面積は1000ヘクタール以上（20ヘクタール皆伐×50年）必要で大山林所有者に限定されています。

土砂流出・環境破壊を誘発
高性能林業機械導入は低コスト化が目的であったが、複雑な日本の山林では高投資・高コストとなり、採算を合わせるため過間伐・荒い作業道敷設となり荒い施業が全国で頻発しています。

持続的森林経営ができない
再造林すると採算が全く合わず大赤字になり、持続的・循環的林業が不可能になります（皆伐収入約50万円/haに再造林費用100万円/ha、さらにその後下草刈り等の費用が加算。50万円の原資に対して、200万円以上の費用が必要）

《大きな林業と小さな林業がわかるアニメーション（2分34秒）》

自伐型林業実践の地域でインパクト

自伐型林業は適正規模の山林を確保し、毎年間伐生産しながら、長期的に経営を安定させる林業です。安定した生業が創出され、移住・定住策となり、獣害対策、災害防止、脱温暖化対策等の様々な効果を発揮します。

自伐型林業の導入は、住み続けられる地域づくりに向けたレジリエンス機能を提供します。 

新たな生業

自伐型林業は秋冬型の季節労働が主となりますので兼業型が基本スタイルです。

森林率8割を超える地域では自伐型林業を主業としながら、農業や観光、また地域資源を使った小さな仕事との組みあわせで多様な生業スタイルが可能です。農業や観光の専業スタイルから、自伐を核にした兼業スタイルが、高収入をも可能にする新たな生業スタイル構築につながります。 

移住・定住

自伐型林業による山林を固定した持続的森林経営は、長期的に安定した収入源となり、家族を安定して養える定住策となります。100年を超える多間伐施業が軌道に乗ると次世代に続く定住策となり、地域における人口減少対策となります。中山間地域でこの成功事例が見せられると都会からの大規模な移住も起こるでしょう。 

獣害対策

日常的に林業施業で人が入ると、野生動物が隠れる場所が少なくなり、獣害対策に効果が出てきます。高知県では、自伐型林業者が増加（数年で約400人以上）することにより獣害被害が減少した実績があります。その結果、農業生産の基盤が安定し、農業生産高の向上につながります。 

防災・減災

長期的森林経営を実現させるためには、風雨等の自然条件に耐える工夫をせざるを得ません。地形や風土を見極めながら、環境を変えない控えめな間伐、風・水・光を抑制する小規模な作業道等をおこないます。これらの工夫は、土砂崩壊を抑制する小規模な砂防施設の効果を発揮し、過去の紀伊半島豪雨、西日本豪雨においても、自伐型林業者の山林ではほとんど被害が見られませんでした。 

木材流通

自伐型林業者が生産した良質な材（Ａ材）は、現状でも主に市場に出荷され地域内外に販売されます。今後高齢樹材が増えるに従いA材の需要（国内外の）拡大は重要です。低質材（Ｃ材）は、木質バイオマス発電所や薪ボイラーを設置する温浴施設・福祉施設などの需要を地域で拡大することが重要です。A材は海外含めた広域需要拡大、C材は地域内需要拡大が基本です。 

自伐型林業推進協会の講師たち

自伐型林業を教えるのは、プロの林業家たちです。
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自伐型林業に関するメディア掲載情報

・「目指せ！持続可能な林業 注目の「自伐型林業」とは？」（NHKクローズアップ現代＋2021.9.15）
・「NPO法人 自伐型（じばつがた）林業推進協会　中嶋 健造さんに聞く　これからの山林の生かし方」（マネジメント倶楽部 2021.8.17）
・「田舎生活支える「自伐型」」（日本農業新聞「農村学教室」 2017.12.3）
・「「自伐型林業」で地域に仕事を生み出す」（NHK「NEXT未来のために」2016.10.29放送）
・「林業者・社会福祉法人・企業に聞く　地域と暮らしに根ざす森の仕事と森林環境税」（マネジメント倶楽部 2022.10.19）
・「高知の山里に若い移住者相次ぐ。「儲かる林業＝自伐型」に熱視線　高知県佐川町」（SUUMOジャーナル 2022.9.15）

映像でわかる自伐型林業

毎週放送！日本唯一の林業専門番組《ZIBATSUニュース》