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山林を担い手に引き継ぐ「大規模山林分散型プロジェクト」ほか

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日本の国土の約7割を占める森林の5割以上は、国有林や公有林、そして100ヘクタール以上を保有する民間の大山林所有者によって保有されています。当協会はこの大規模山林の活用が、「林業関連産業で100万人の就業創出」実現のための大きな鍵だと考えています。

経営モデルの確立や新たな制度を構築するため、9月9日、衆議院議員会館に、民間の大規模山林所有者、公有林の管理者、国会議員などが集まり、プロジェクトのキックオフが開催されました。この日立ち上がったのは、「大規模山林分散型プロジェクト」と「相続税対策プロジェクト」です。

img_08369月9日のプロジェクト立ち上げ会議の様子

「大規模山林分散型プロジェクト」は、大規模山林の保有者が、伐採に特化した事業者に施業を委託するのではなく、多くの就業を地域に創出し、持続的に森林を経営していく経営モデルを確立することを目指しています。その時参考になるのが、日本一の林業地として知られる奈良県吉野地域の「山守(やまもり)制度」です。1500ヘクタールを保有する大規模山林所有者の土地は、かつて約100人の山守たちが管理していたと言います。まさにそこでは、大規模山林を分散化し、「自伐的」に管理する方法が採用されていました。この「山守制度」を「現代版山守制度」へとリニューアルし、大規模山林を新たな担い手たちの就業や生業の場に変えていくことが今求められています。

並行して進めることが必要なのが、相続税の制度改正です。現在、山林は「財産」という位置づけとなっているため、民間で大規模山林を保有している場合、農地に比べて非常に高額な相続税を支払うことが必要になっており、「相続税破産」を回避する対応に追われます。この現状を打破し、「持続的な経営を行っている生業の場」としている場合は、税が優遇される制度改正を行っていく必要があります。この「持続的な生業の場」するためには、「現代版山守制度」による分散管理、つまり「自伐化」が不可欠になるのです。

9日の会議では、持続的森林経営の定義、適切な山林評価方法、あるべき相続税制度などについて、活発な議論が展開されました。また、「分散管理」を実現するためには、担い手の育成、山林バンクの構築(後述)が不可欠であるという認識も共有され、プロジェクト間の情報共有、特定地域を定めて複数のプロジェクトを同時に動かす必要性も提起されました。引き続き、セクターを超えたメンバーによって、日本の森林の5割以上の積極的な活用を進めていきます。

担い手に引き継ぐ「山林バンクプロジェクト」

そして、これらふたつのプロジェクトと密接に関連するのが、「山林バンクプロジェクト」です。現在、私たちのところには、新たに自伐型林業での就業を希望する数多くの人たちからの問い合わせがあります。その多くを占めるのが「山林確保」の問題です。

山林は地域住民にとって「ただの土地」以上の意味をもつ場合が多く、よそ者である移住者はその山林を確保しづらい現実があります。一方で、現在全国で進められている木質バイオマス発電に必要な材を集めるため、皆伐(禿げ山にしてしまうこと)をいとわない伐採を専門とする地域の事業者が短期的な収益確保のために買い漁っているという現実もあります。水源地においては、外国資本による買い占めも起きています。

埼玉県西部の皆伐現場

これに対して、私たちが目指しているのが、自伐型林業による持続的な森林経営を条件として、山林所有者と就業希望者をつなぐ「山林バンク」の創設です。

8月25日には、私たちの活動に賛同してくれているNPOバンクの制度や地方活性化、森林の活用に強い関心と実績のある見山謙一郎氏と具体的な山林バンク構想について議論しました。そこでは、ローカルレベルでのバンク、ナショナルレベルでのバンクの両方が連携して山林の適切な流通を実現する必要性が確認されました。現在、具体的に重点地域で地域の金融機関と連携した仕組みづくりを開始する方向で検討が進んでいます。あわせて、既に同様の主旨で山林バンクを位置づけ、動き出している基礎自治体(例えば鳥取県智頭町)もあり、自伐型林業による「地域おこし協力隊」などの担い手育成とも連携した仕組みを構築していく予定です。日本財団の協力も得ながら、日本最大の山林資源の持続的活用を目指した全く新しい流通体制の構築を行っていきます。

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